電気工事士に受かってもすぐ独立はできないってほんと?

電気工事士に受かってもすぐ独立はできないってほんと?
電気工事士は国家資格で、電気工事に関する独占資格です。
つまり、電気工事を行うには電気工事士でなくてはいけないということです。
電気工事の仕事をするには必須の資格ですが、電気工事士の試験に受かったらすぐに独立開業できるのかと言うとそういうわけではありません。
免状の交付まで待たないといけない、という話ではありません。
では独立するまで何年ぐらいかかるのでしょうか。
参考リンク電気工事士の資格についてはこちら
資格・許認可|電気工事士

電気工事士は国家資格で業務独占資格

第一種と第二種によってその範囲に差はありますが、電気工事士は業務独占資格と言われる資格で、電気工事を行うには電気工事士でなくてはいけませんし、電気工事士なら電気工事を行うことができます。

それなら、電気工事士の免状を取ればすぐに電気工事の会社を立ち上げられるのか、と言うとそういうわけではないのです。

電気工事業の業務の適正化に関する法律(通称 電気工事業法)

これは法人に限らず個人事業主、またはフリーランスでも共通なのですが電気工事業の業務の適正化に関する法律(以下 電気工事業法)には以下のような条文があります。
電気工事業の業務の適正化に関する法律(平成20年12月版)
第2章 登録など
(登録)
第3条 電気工事業を営もうとする者(第17条の2第1項に規定する者を除く。第3項において同じ。)は、二以上の都道府県の区域内に営業所(電気工事の作業の管理を行わない営業所を除く。以下同じ。)を設置してその事業を営もうとするときは経済産業大臣の、一の都道府県の区域内にのみ営業所を設置してその事業を営もうとするときは当該営業所の所在地を管轄する都道府県知事の登録を受けなければならない。

主任電気工事士

それなら電気工事業の登録をしてしまえばいいという話になります。
そこで立ちはだかる壁が、主任電気工事士の選任です。
電気工事業法を見てみましょう。
電気工事業の業務の適正化に関する法律(平成20年12月版)
第2章 登録など
(登録の申請)
第4条 前条第1項又は第3項の登録を受けようとする者(以下「登録申請者」という。)は、次の事項を記載した登録申請書を経済産業大臣または都道府県知事に提出しなければならない。
一 氏名又は名称及び住所並びに法人にあつては、その代表者の氏名
二 営業所の名称及び所在の場所並びに当該営業所の業務に係る電気工事の種類
三 法人にあつては、その役員(業務を執行する社員、取締役、執行役又はこれらに準ずる者を言う。以下同じ。)の氏名
四 第19条第1項に規定する主任電気工事士の氏名(同条第2項の場合においては、その旨及び同項の規定に該当する者の氏名)並びにその者が交付を受けた電気工事士免状の種類及び交付番号
電気工事業の業務の適正化に関する法律(平成20年12月版)
第3章 業務
(主任電気工事士の設置)
第19条 登録電気工事業者は、その一般用電気工作物に係る電気工事(以下「一般用電気工事」という。)の業務を行う営業所(以下この条において「特定営業所」という。)ごとに、当該業務に係る一般用電気工事の作業を管理させるため、第一種電気工事士又は電気工事士法による第二種電気工事士免状の交付を受けた後電気工事に関し三年以上の実務の経験を有する第二種電気工事士であつて第6条第1項第一号から第四号までに該当しないものを、主任電気工事士として、置かなければならない。
主任電気工事士は誰でもいいわけではありません。
少なくとも3年以上の実務経験のある電気工事士が必要です。またこの主任電気工事士は他の営業所や他の会社の主任電気工事士と兼任することはできません。
また、実務経験とは「登録電気工事業の事業者において電気工事に従事した経験」となります。もちろん資格を取得した後でないと工事に従事することができないので、実務経験のカウントは資格取得後からとなります。資格を取得してから単純に3年以上たっただけでは実務経験とはなりません。
主任電気工事士とは単に電気工事を行う者ではなく、作業の管理の職務を行う義務が課せられます。そのため、一定の実務経験が必要になります。
なお、第一種電気工事士の免状を取得するには3年以上の実務経験が必要であることから、第一種電気工事士の場合は実務経験が不問となっています。

これが電気工事士の資格(免状)を取得してもすぐに独立できない理由であり、独立に対する大きな壁となります。
石の上にも三年というわけではありませんが、電気工事業として独立するなら少なくとも3年間は工事スタッフとして従事する必要があります。

電気工事業の登録をしないで電気工事をしていたら

電気工事業の登録の例外があります。それは業として電気工事を行わない場合です。
例えば、自宅の電気配線を直す場合です。当たり前ですが、電気工事士でないといくら自宅でも勝手に電気工事を行ってはいけません。
その他にマンションの管理者がマンションの電気設備を点検、修理する場合など、他者に委託されずに自ら行う作業などがこの例外にあたります。ただし、報酬が発生するかどうかにかかわらず、他者から委託されて行う電気工事は未登録で行ってはいけません。※条件によっては例外と認められるものもあります。

電気工事士法

電気工事士以外が自宅の電気工事を行った場合は3か月以下の懲役または3万円以下の罰金となります。
電気工事士法
(電気工事士等)
第3条 第一種電気工事士免状の交付を受けている者(以下「第一種電気工事士」という。)でなければ、自家用電気工作物に係る電気工事(第3項に規定する電気工事を除く。第4項において同じ。)の作業(自家用電気工作物の保安上支障がないと認められる作業であつて、経済産業省令で定めるものを除く。)に従事してはならない。
2 第一種電気工事士又は第二種電気工事士免状の交付を受けている者(以下「第二種電気工事士」という。)でなければ、一般用電気工作物に係る電気工事の作業(一般用電気工作物の保安上支障がないと認められる作業であつて、経済産業省令で定めるものを除く。以下同じ。)に従事してはならない。
3 自家用電気工作物に係る電気工事のうち経済産業省で定める特殊なもの(以下「特殊電気工事」という。)については、当該特殊電気工事に係る特殊電気工事資格者認定証の交付を受けている者(以下「特殊電気工事従事者」という。)でなければ、その作業(自家用電気工作物の保安上支障がないと認められる作業であつて、経済産業省令で定めるものを除く。)に従事してはならない。

第14条 第3条第1項、第2項又は第3項の規定に違反した者は、3月以下の懲役又は3万円以下の罰金に処する。

電気工事業の罰則

電気工事業法では第6章で罰則を規定しています。
電気工事業の業務の適正化に関する法律(平成20年12月版)
第6章 罰則
(罰則)
第36条 次の各号の一に該当する者は、1年以下の懲役もしくは10万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
一 第3条第1項又は第3項の登録を受けないで電気工事業を営んだ者
二 不正の手段により第3条第1項又は第3項の登録を受けた者
三 第28条第1項又は第2項の規定による命令に反した者

第37条 次の各号の一に該当する者は、3月以下の懲役若しくは3万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
一 第21条第1項、第2項又は第3項の規定に違反して自家用電気工事の作業又は一般用電気工事の作業に従事させた者
二 第22条の規定に違反して電気工事を請け負わせた者

第38条 第23条の規定に違反して電気用品を使用した者は、10万円以下の罰金に処する。

第39条 次の各号の一に該当する者は、3万円以下の罰金に処する。
一 第19条第3項の規定に違反して主任電気工事士の選任をしなかつた者
二 第24条の規定に違反して同条に規定する器具を備えなかつた者

第40条 次の各号の一に該当する者は、2万円以下の罰金に処する。
一 第10条第1項又は第34条第4項の規定による届出をせず、又は虚偽の届出をした者
二 第17条第1項後段の規定(第28条第4項において準用する場合を含む。)に違反して通知をしなかつた者
三 第17条の2第1項、同条第4項において準用する第10条第1項又は第34条第5項の規定による通知をせず、又は虚偽の通知をした者
四 第29条第1項の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をした者
五 第29条第1項の規定による検査を拒み、妨げ、若しくは忌避し、または同項の規定による質問に対して答弁をせず、若しくは虚偽の答弁をした者

第41条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業員が、その法人又は人の業務に関し、第36条から前条までの違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対して各本条の罰金刑を科する。
電気工事士になってすぐに独立したい場合、既に実務経験のある従業員を雇い、その従業員を主任電気工事士として電気工事業の登録を受けることも可能でしょう。その後3年経てば、晴れて自分自身が主任電気工事士として登録することができ、主任電気工事士を交代したり新たな営業所を設けることができるようになります。
厳しい条件がありますが、電気工事の品質を保つために作られた法律で、その効果は大きいとされています。
無免許、未登録でもぐりの仕事をするのではなく、しっかりとした体制で事業を興し、しっかりと利益を出しましょう。
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