工事の際に下取り値引きを行うには古物商許可が必要になりますか?

question
工事の際に下取り値引きサービスをやる場合、古物商許可は必要になるの?
answer

いくつかの条件に当てはまれば「古物営業」とみなされないんだけど、ちょっとでも条件を外れると必要になっちゃうんだよ。
だから基本的には古物商許可は取ってから下取りはした方がいいね。
警察に身分証明書(役所で発行してもらうもの)や住民票を提出する必要があるけど、登録は簡単だし古物商許可を持っていることは一つの信頼の印にもなるからね。

例えばエアコン工事の際に、今ついているエアコンは家電リサイクルするために排出者(この時点ではユーザー)が家電リサイクル料金を納めてリサイクルする必要があります。
自分でリサイクル指定引き取り所まで持っていけない場合は、別途業者に頼む必要がありますがこの場合は更にリサイクル収集運搬料が発生します。
家電リサイクル料金は法律で金額が細かく決まっています(メーカー、品目、大きさなどによる)が、リサイクル収集運搬料は業者ごとに決めていいことになっています。

工事業者によってはこのエアコンを下取りとして買い取り、工事料金を値引きするという場合があります。
ここでこの行為と各法の関係を考えます。

古物営業法との関係

中古のエアコンを有償で引き取ること(値引きを含む)

中古のエアコンという「古物」(一度使用された物品)の有償での引き取りは、基本的には、古物営業法上の「古物営業」に当たるものと考えます。

いわゆる「下取り」について

警察庁通達(参考リンク参照)によれば、以下の要件を満たす場合には、「古物営業」にあたらないものと解釈される運用のようです。
  1. 形式的要件

  2. 下取りした古物の対価として金銭等を支払うのではなく、販売する新品の本来の売価から一定金額が差し引かれる形での経理上の処理が行われていること。
  3. 実質的要件

    1. 下取りが、顧客に対する「サービス」の一環であるという当事者の意思があること。
    2. 下取りする個々の古物の市場価格を考慮しないこと。
      ※具体例としては、同種の物品を販売する業者が、下取りする品物の査定を行わずに、「一律」の「値引き」をする場合には、「古物営業」に当たらないと考えられるようです。
    3. 本件では、上記(2)に類似します。ただし、上記通達は、エアコンを販売する会社が、販売する新規のエアコンの売価から、一律に下取り金額を差し引く場合を想定しています。
      これに対し本件では、エアコンの取付工事を実施する会社が、取付工事代金から値引きを行う場合になります。仮に、値引きの金額が「一律」だったとしても、厳密には上記通達とはケースを異にするものと考えます。おうちのこうじ.comで探した限り、家電取付工事実施会社の下取りに関する警察庁の通達は見当たりませんでした。古物営業法が公安委員会(警察)の許可に係る法律であることを考えると、該当する通達がない場合には、上記原則通り、エアコンの引取り(工事料金からの値引き)は「古物営業」に該当する可能性があると考えたほうが無難なのではないかと思います(もしくは、管轄の公安委員会において、通達の有無等を確認する必要があるかと思います)。

エアコンの下取りを行った場合に考えられるケース

  1. 修理して再販する
  2. 修理業者などにそのまま再販する
  3. 必要な部品を取り出し残りを廃棄する

家電リサイクル法との関係

中古のエアコンを有償で引き取った場合、引き取った会社が、ユーザーから家電リサイクル法上の「排出者」としての義務を承継することになります。
もっとも、下取りをした中古エアコンについて、第三者に販売をする場合は、家電リサイクル法に定める「廃棄物」の「排出」には当たらないものと考えます。
他方、3のケースに関しては、「廃棄物」の「排出」に当たりますので、家電リサイクル法上、「小売業者」に対し、当該「廃棄物」の引取りを求めることになります。
法律上、上記家電リサイクル法上の処理に加えて、産業廃棄物としての処理も認められているようですので、廃棄物処理法に基づき適切に処理することもできるものと考えます。

その他

とある通販会社が、販売業者として、掃除機を販売するに当たって、下取りで「一律」2万円値引きをする場合、上記警察庁の通達に該当しますので、古物営業許可は必要ない可能性があります(もっとも、許可を取っているかもしれませんが)。
なお、仮に値引きではなく無償での引取りの場合、今度は一般廃棄物(⇔産業廃棄物)の収集運搬業の許可の問題が出てきますが「(2)新しい製品を販売する際に商慣習として同種の製品で使用済みのものを無償で引き取り、収集運搬する下取り行為については、産業廃棄物収集運搬業の許可は不要であること。」(平成25年3月29日付け環廃産発第13032910号「産業廃棄物処理業及び特別管理産業廃棄物処理業並びに産業廃棄物処理施設の許可事務等の取扱いについて(通知)」の第1、14(2))という通達があるようです。

まとめ

以上をまとめますと、中古のエアコンを引き取る場合、何らかの値引きがあり、有償と評価される場合には、古物営業の許可の問題が出てくると思います。おうちのこうじ.comが調べた限りでは、家電を販売する会社が「一律」商品から値引きをする下取りの場合には許可は不要のようです。他方、家電の設置工事をする会社が工事代金から値引きをする場合にも同様に考えられるのかは、公安委員会、警察の確認が必要ではないかと思います。
また、家電リサイクル法との関係では、中古のエアコンを有償で引き取った場合には、「小売業者」ではなく、お客様から「排出者」としての責任を承継することになりますので、これを販売せずに処分する場合には、上記で述べた適切な処理が必要になるかと思います。

おうちのこうじ.comでは

工事業者の方へ

下取り値引きを行う工事業者には古物商許可取得を義務付けています。下取り値引きサービスを行いたい場合で古物商許可を取得していない場合はすぐに古物商許可を申請しましょう。申請は丸1日あればなんとかできます。そして申請から許可までは1か月ほどかかります。

ユーザーへ

おうちのこうじ.comは法令遵守に重きを置いています。安心してご依頼ください。

法律に関する部分は顧問法律事務所に相談の上編集しておりますが、管轄などにより解釈が異なる場合があります。そのためできるだけグレーになる事例ではなくクリーンに安心して取り組める方法を原則と考えています。